分散型ドメインサービスを提供するイーサリアム・ネーム・サービス(ENS)は2026年2月7日に、独自レイヤー2ブロックチェーン「Namechain」の開発を正式に中止し、次期メジャーアップグレードである「ENSv2」をイーサリアム(ETH)のメインネット(レイヤー1)上に独占的に展開するという重要な方針転換を発表しました。
ENSの開発チームは当初、イーサリアムL1のガス代高騰とスケーラビリティの問題を解決するため、独自のL2ネットワークであるNamechainへの移行を「不可避な選択」として計画していました。しかし、過去2年間でイーサリアムのエコシステムが予想を上回るスピードでスケーリングを実現したことを受け、L1に留まることがユーザーにとって最善の選択であると再評価しました。
今回の決定により、ENSv2はL1上で直接展開されることになりますが、開発ロードマップ自体に変更はありません。ユーザーは、Namechainへの移行に伴う複雑なブリッジ処理や新たな信頼前提を必要とせず、イーサリアムL1が持つ強固なセキュリティと分散性をそのまま享受しながら、ENSv2の新機能を利用できるようになります。
ENSが独自L2の開発を中止した最大の理由は、イーサリアムL1のスケーリング性能が劇的に向上したことにあります。発表によると、イーサリアムのガスリミットは2025年初頭の3000万から、最近実施された「Fusaka」アップグレードによって6000万へと2倍に増加しました。さらに、コア開発者たちは2026年中にこの数値を2億まで引き上げることを目標としており、これは現在の3倍以上の規模となります。
こうしたインフラの改善により、ENSの利用コストは大幅に低下しました。具体的なデータとしては以下の点が挙げられています。
ENSチームは、独自L2であるNamechainを導入する場合、シーケンサー(ブロック生成者)の集中化や、ロールアップコントラクトのアップグレード権限といった「新たな信頼の前提(トラスト)」が必要になることを懸念していました。L1のコスト問題が解決された現在、セキュリティや分散性を犠牲にしてまでL2へ移行する正当性が薄れたと判断されました。
イーサリアムL1は、金融やWeb3(分散型ウェブ)の基盤として、他のどのL2も完全には複製できない最高レベルのセキュリティとライブネス(稼働継続性)を保証しています。ENSはL1に留まることで、これらのインフラ保証を最大限に活用し続けることができます。
Namechainの開発は中止されましたが、ENSv2によってもたらされるユーザー体験(UX)の革新はそのまま維持されます。開発チームは過去18ヶ月間、レジストリ アーキテクチャの刷新や所有権モデルの改善に注力しており、これらの機能はすべてENSv2として提供されます。
特に注目されるのは、クロスチェーンの複雑さを排除できる点です。当初の計画では、NamechainとL1の間で名前解決を行うために「CCIP-Readゲートウェイ」への依存が必要とされ、これが解決プロセスのボトルネックになる懸念がありました。L1独占展開により、アーキテクチャはよりシンプルになり、障害リスクも大幅に低減されます。
ENSv2で実現する主な機能としては以下のようなものが挙げられます。
現在、新しい登録フローや管理機能を体験できる「ENS App」と「ENS Explorer」のパブリックアルファ版がすでに公開されています。
ENSチームは公式発表の中で、超音速旅客機「コンコルド」の開発事例を引き合いに出し、「サンクコスト(埋没費用)にとらわれず、状況の変化に合わせて方針を転換する勇気」の重要性を強調しました。Namechainへの投資や開発リソースは決して無駄ではなく、L2アーキテクチャに関する知見は、今後の相互運用性の向上やユーザー体験の改善に活かされるとしています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.09円)
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source:ENS公式発表
サムネイル:AIによる生成画像


