ビットコインとイーサリアムが過去12カ月間で約40%下落した一方、AXT Inc.は5100%超の急騰を記録し、今サイクルの金融市場で最も注目されるAI関連銘柄の一つとなった。
AXTの事業内容、その急騰の背景、過酷な暗号資産市場の1年でビットコインやイーサリアムとどう比較されるかを解説する。
AXT Inc.はカリフォルニア州に本社を置く半導体メーカーであり、高性能な化合物基板を製造する。主力製品はリン化インジウムで、ガリウムヒ素やゲルマニウムも展開。いずれもAIをはじめとする高度な光電子・光学用途に不可欠な素材となる。
その数字は鮮明だ。AXTIは2025年6月時点で1.74ドル前後で取引されていたが、2026年6月初旬にはおよそ89ドル近くまで急伸。1年で5100%超の上昇となった。
株価は2026年5月22日に一時140ドル超という過去最高値を記録。その後約35%調整したが、年初来の上昇率は今も突出しており、株式市場全体でも屈指のパフォーマンスである。
背景にはAIインフラ需要の爆発的拡大がある。グーグル、アマゾン、マイクロソフト、Metaなどの大手ハイパースケーラー各社がデータセンター建設を加速し、AXTの受注残が過去最高となった。将来的な生産能力拡大への期待も高まった。
AXTのリン化インジウム基板は、800Gbpsや1.6Tbpsといった次世代レーザーや光トランシーバーの中核を担う。これらの部品が現代のAIデータセンター内での超高速相互接続を実現、エコシステム全体で不可欠な存在となった。
同社は世界のリン化インジウム供給の約40%を担う。短期的な代替品はほぼ存在せず、AXTIはAIインフラ供給網の一角で希少な価格決定力と準独占的地位を持つ。
2026年1-3月期決算(4月30日発表)では、AXT Inc.(AXTI)の売上高が2690万ドルとなり、前年同期の1940万ドルから39%増加した。
粗利益率は29.6%に大きく改善(2025年1-3月期はマイナス6.4%)。GAAPベースの純損失も160万ドル(1株当たり0.03ドル)まで大幅に縮小し、アナリスト予想を上回った。
AIデータセンター向けのリン化インジウム基板需要の強さが業績を押し上げ、受注残高は1億ドル超と過去最高となった。
対照的に、ビットコインとイーサリアムは下落基調となった。暗号資産市場の主役であるビットコインは1年前に約11万ドルで推移していたが、本稿執筆時点で約6万700ドルと、ほぼ40%下落している。
今週、この動きはさらに加速した。ビットコインは大規模な清算イベントに見舞われ、1週間で17%超下落し、6万ドルを割り込んだ。保有量の多い主要投資家の間でも、ここまでの下値は想定外だった。
マクロ環境も追い風にはならなかった。スポット型ビットコインETFでは今週だけで流出額が17億ドル超に達し、過去1年以上で最大規模となった(SosoValue データより)。一方、米国の強い雇用統計発表により利下げ観測が後退したことも下押し要因となった。
イーサリアムも同様に下落基調をたどった。1年前は2685ドル前後だったが、現在は1560ドル付近と、この12カ月間でほぼ35%下落した。
今週もイーサ(ETH)にとって厳しい週となった。過去7日間で22%超下落し、主要なテクニカルサポート水準を割り込んだ。現在、暗号資産のみならず伝統的金融市場でも支配的となっているリスク回避のセンチメントを映し出した格好。
AXTIの事例は大きな教訓を示す。現下の生成AIブーム下では、一部の特化型「ピック&ショベル」関連の供給企業が、同じ投資期間でビットコインやイーサリアムなど人気暗号資産の物語をもしのぐリターンを生み出す場合がある。
もっともAXTIは依然として極めて高いボラティリティに晒されている。高水準のバリュエーションやAI業界への依存、中国での生産比率の高さといったリスクが現実となる。一連の価格推移は、AIサプライチェーンの目立たぬ分野にひそむ大きな上昇余地を浮き彫りにした。

