ブレント原油価格は1バレル95ドル近辺を維持し、月間で13%下落したにもかかわらず2週連続で上昇。IMFが原油上昇によるインフレリスクに警告したことで、投資家が再び強気へ傾きつつある。
最も明確な兆候はオプション市場に表れている。トレーダーは月間下落トレンドにもかかわらずコールを買いに動いている。一方、投機ファンドやパーペチュアル取引の参加者は逆方向を志向しており、この乖離が次局面の伏線となる。
原油高の理由は供給面に由来する。国際通貨基金(IMF)は、世界の原油価格が4月の成長予測に組み込んだ水準を約3%上回っていると指摘。その要因としてイラン情勢を挙げている。
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IMFの推計によると、イラン情勢に伴う混乱で日量約1,400万バレルの生産が失われている。世界の原油在庫も戦争前の80億バレルから、7月には過去5年で最低水準となる75億バレル近辺まで落ち込む見通し。
リスクの中心はホルムズ海峡だ。世界の原油流通量の約5分の1が通過する。価格動向は今後、この経路が完全再開するかどうかに左右される。
同じ供給面の逼迫が次は米国のインフレにも波及し始めている。
エネルギーコスト上昇は企業調査に現れた。ISMサービス価格指数(サービス業全体の原材料費を示す指標)は、4月の70.7から5月は71.3へ上昇。2022年8月以降で最高水準となった。
調査回答者は上昇項目としてディーゼル、ガソリン、原油を挙げた。パネルが石油をコスト増要因として直接指摘したのは初。値下がりした商品はなかった。
Kobeissi Letterによれば、同指数は2月以降8.3ポイント上昇。この傾向が続けば、CPIインフレ率は4月の3.8%から5%超へ加速する可能性があると指摘。サービス価格は過去にも消費者物価の3カ月前の先行指標とされてきた。
インフレ加速は原油強気派の買い増し理由となる。投資家のポジショニングにもその動きが出始めた。
こうした買いはむしろ逆張り志向を示す。月間で原油価格が13%下落した中、オプション取引では上昇に賭ける動きが強まった。
米国ブレント原油ファンド(BNO)のプット・コールレシオは、6月4日現在、出来高ベースで0.06、建玉ベースで0.11。いずれも5月26日の0.12、0.15から大きく低下。
低下は1コール当たりのプットが減少していることを意味する。イラン・リスクやインフレ加速を受けた静かな上昇期待といえる。値下がりトレンドの陰で進むため見落とされがちだ。
ただしオプション市場のこの確信は、規模の大きい先物市場の動きとは逆行している。
米商品先物取引委員会(CFTC)が5月26日付でまとめた建玉報告では、投機資金は逆に動く。非商業部門は買い玉約5万8110枚に対し、売り玉9万924枚とネットで売り越し。
この週に投機筋は買い玉を1703枚減らし、売り玉を6145枚増やした。週次の価格上昇にも関わらず弱気に傾斜した。
一方で商業部門(ヘッジャー)は逆の動き。いわゆる「賢い資金」とされる彼らは、買い玉を4319枚増やし、売り玉を907枚減らした。コール買い同様、下げ局面で積極的に買いを入れている。これはオプション市場が織り込む「インフレ主導型強気シナリオ」と一致する動き。
パーペチュアル取引の投資家は方向感を欠いている。ハイパーリキッドのブレント原油-USDCペアのファンディングレートは、ロングとショートのどちらが優勢かを示す指標であり、急激なマイナスへの振れが後退した後、30日間でほぼ中立にあたるマイナス0.0013%付近で推移している。
この迷いとややマイナス寄りの動きは実際の上値の重さを映す。ベネズエラの原油輸出が前年同月比で61%増の1日あたり125万バレルに拡大し、7年ぶりの高水準となった。米国による制裁の緩和が供給増となり、強気筋の勢いの上限となっている。
この状況により、原油価格は2つの力の狭間にある。イランの供給ショックと2022年以来となるサービスインフレの高止まりは、価格を押し上げる要因であり、コールオプションの買い手や商業ロングはこのシナリオに賭けている。一方、ベネズエラからの1日125万バレルの再参入は逆方向に作用し、勝敗がつくまで投機的なショートや横ばいのファンディングレートが、投資家の様子見姿勢を示している。


