24歳の元OpenAI研究者が、人工知能に関する悲観的なエッセイをウォール街で最も注目される取引の1つへと変えた。レオポルド・アシェンブレンナー氏のAIヘッジファンド「シチュエーショナル・アウェアネス」は、現在約200億ドルを運用している。
ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えた数字によれば、このファンドは本年5月までの時点で、手数料差引後でおよそ270%のリターンを達成した。年初に預けた資金は、春にはほぼ4倍になった計算。
AIブームを金鉱ラッシュと捉えている。アシェンブレンナー氏は、誰が最も多くの金を掘り当てるかに賭けるのではなく、「シャベルを売る側」に賭けている。
同氏が考える「シャベル」は電力とコンピューター。強力なAIは大量の電力と計算リソースを必要とする。こうした物理的な制約こそが、誰が富を得るかを決定づけると語っている。
この戦略は2024年に発表した全165ページのエッセイで展開され、一躍話題となった。同氏が強く支持する「シャベル提供者」には、コインのマイニングの代わりにAIをホスティングするビットコイン・マイナーなどが含まれる。
同氏最大の公開保有は、現地で発電できる燃料電池を手掛けるブルーム・エナジー社。他にもAI計算能力を貸し出すコアウィーブや、マイニング用途だったがAI専用に転用されたデータセンターなどを保有する。
ひとつ抜け目があるのは、電力関連に賭ける一方、人気の半導体メーカーには「売り」のポジションを取っている点。エヌビディア株の下落に15億ドル超、半導体株のバスケット下落にも20億ドル以上を賭けている。
これらはトレーダーの間で「空売り」と呼ばれる戦略。その理由は明快。半導体株の価格はすべてが完璧に進むことを織り込み済みだが、真の供給制約は電力だと見ている。
最大の投資先は株式ではなく、クローズドなAnthropic(Claudeチャットボットを展開する企業)の未上場持ち分である。
同氏は2025年2月、Anthropicの企業価値が約600億ドルの時に投資。その後2026年5月には新たな資金調達ラウンドで企業価値が9650億ドルへと飛躍。この投資が全ファンドの約2割を占めている。
運用会社名はAnthropicの投資家リストにも掲載。また、Anthropicは現在非公開IPO(新規株式公開)準備中。
門外不出とされる巨大トレーディング企業のジェーン・ストリートも、このファンドに資金を拠出している。
1つのアイデアに巨額を賭けるのは諸刃の剣。AI関連企業の支出が減ったり電力不足が緩和すれば、ファンドは急落する可能性もある。
このリスクは、ビットコイン・マイナーのAI関連株全体に共通している。
現時点ではこのベットは奏功しているが、Anthropicの急騰した未公開バリュエーションが維持されるか次第で今後が決まる。数カ月で「シャベルが金に勝る」かどうかが分かる。


